ルノー4(キャトル)K4GPレースカー エンジンオーバーホール

| Posted in , , , | Posted on 2018/08/15

2018年8月14日のK4GP1000Kmレースで
ウチのお客様チームが無事完走したのに触発されて
書こう書こうと思っていた、エンジンオーバーホールのブログです!




さかのぼること今年の5月
ブローバイの煙がすごいということで入庫して頂きました。



このような症状ですとピストンリングが割れているとか
シリンダーがガリガリだとか、簡単に想像がつきます。


さっそくヘッドを外していきます。

単純にバラスのは簡単ですが、現在の状態を把握しながら
外すところは外し、先に改善できるところは先に直しちゃいます。
特にこの車両はインジェクションに改造してあるので
あとで組み方がわからなくならないように
写真で記録していきます。
(デジカメでこの作業が昔より断然楽になってます)



ラジエター電動ファンスイッチのカプラーが接触不良の熱で
配線がトロッと

オルタネーターL、B端子ターミナル緩い

オルタネーター取り付けボルトが短く、
ナットの半分くらいしか掛かってない
インマニが2ピースなのでネジの遊びでピッチが変わってしまうかも?
という注意点を頭にインプット

作られた配線が多いので間違えないように
マスキングテープで相手の場所を書いた(新人の時によくやった(笑))

知ってる人しか知らない
キャトルの冷却水ドレーン

ヘッドカバーは締め過ぎで凹んでいる

アクセルワイヤーのひっかけるクリップ割れ
材質も触ると粉になってしいます。
 
カバー開けたら中身はきれい

ヘッド取れました。


主原因の観察をしていきます。
グループごとに見ていきましょう。

まずは腰下から。

2番シリンダーガリガリ&段付き!


オイルパンには鉄粉が

そしてピストンリング割れ
割れたかけらの一部見つからなかったのですが
何とか回収成功

メタルは大丈夫。
いい感じのアタリです。


今回は車上でピストンの交換をするので
ブロックはエンジンルームのまま


シリンダーヘッド観察

燃焼室と水路の際に虫食い!
圧縮漏れ、水混入の原因になりえます。

バルブもばらしていきます。

ヘッドの反り点検
規定は5/100mmですのでこれはクリアー

ヘッドの面研は過去に2.7mm
削られていました
ちなみに基準値は0.5mmまでですが
圧縮比を上げるためだと思います。

燃焼室の際まで面研されています。

バルブのアタリも幅広っ!

バルブを少し引き出して
ステムのガタ点検→ガタガタ
特に基準値の記載はありませんが
エンジンという物差しで判断。


ここまで来れば部品の手配、部品を使わない機械加工ができますので
国内、海外に一斉にオーダーを入れます。
到着を待ちましょう。

そして数週間後。
部品が到着し始めたので
加工や組み付けに移ります。

腰下
 

海外部品はそのまま使うと痛い目に合うので
よく見ましょう。


ピストンピンは2mmオフセットタイプ


ピストンリングは向きが決まっているのですが
2~3個上下逆についています。
ちゃんと見てヨカッタ!



ブロックにシリンダーライナーを仮に入れていきます。


ブロック上面とライナーの上面の寸法を
1/100mmで測り、記録しておきます。
この純正工具ものすごく久しぶりに使った!



そして今回の唯一のチューニング
ピストンとコンロッドのフルフローティング加工です!
ピストンピンは短縮加工&ピストンはサークリップ溝加工
コンロッドはブッシュ入りのフローティング。

オイルを塗りながら
組み付け。
ピストンピンがオフセットして向きがありますので
回転方向を考えて組み付けます。
ちなみに現車は逆向きについてました!
純正ピストンならばマーキングで向きがわかるのですが
生産中止で社外品を使うのでマーキングはあれど
意味がわかりません!

ピストンリングを正規の向きに組み直して
合い口の位置もリング3本ずらします・・・

ピストンリングコンプレッサーにセット。
コンロットの大端部がライナーに通らないので
先にピストンをライナーの下から入れておきます。
モリブデンコーティングされているので
馴染みは良さそうです。

先ほど測ったブロック上面とライナー上面の寸法差を
ライナーパッキンの3種類の厚さを選んで使って
高さを規定値に調整します。
この構造は知っている限り1300ccまで、
1400ccはOリングとなります。

組み付け終了。
本当はオイルパン外した下からの作業が狭くて大変ですが
画像無し。取るの忘れました。
特にオイルパン取り付けは大変で
この状態でエンジンを吊っての作業になります。

シリンダーヘッド
既に2.7mm面研してあるのに
さらに0.34mm追加面研。
でも、予想よりは少なく虫食いが取れました。
付いていたヘッドガスケットよりも
少し厚いガスケットで相殺します。

バルブのアタリも
きっちり細くなりました。

ガタガタだったガイドも製作&交換
贅沢にベリリウム銅使用!

燃焼室も綺麗に掃除!
バルブに削って文字書いたのは
以前やった誰かの仕業。
本当はヒートスポットになりかねないので
マーカーなどで書いておきたいところです。
 

ステムシールも付くように製作しました。
オイル下がり防止対策です。
キャトルは元々シールが付いていません。
普通は付いている物なんですが。

きれいに組み込み

ガスケットはノーマルタイプ

規定値で締め付け。
時間を置いて2回目も締め付け。
ガスケットが馴染んだ後にも締め付けします。
 
バルブクリアランス調整
 


マニホールドガスケットは社外品は使いません。
純正が対策品になっていますので
必ずそれを使います。
純正はメタルガスケットで丈夫ですが
社外品は切れてエアーを吸ってしまう可能性が大です。
現車も切れていました。
 
アクセルワイヤー交換
 

オイルは協賛して頂いたユニルオパールの
ナラシ用をまずは入れて
エンジンをかからない状態でさんざんクランキング
そのあと無事にエンジン始動して
ブローバーもなくなりますた!
 
 
 
そして後日

試運転&ナラシ走行へGO!

ですが途中70Km地点でエンジンストップ!
ローダーで戻ってきました。
ガソリンリフトポンプが故障です。

で、すぐに信頼の
メイドインジャパンポンプに多少加工して
交換。

翌週リベンジで
230Km走破したところで・・・

ナラシ用オイル抜いて点検。
いい汚れ具合です。
馴染んだ粉が結構あります。

そしてユニルオパール
耐久本番用オイルへチェンジ

無事出庫となりました!
 
 
で、無事レースも完走してくれました!